★.hack//SIGN−1の2★                         
                         


ナレ  薄く雪をかぶった邪神像がそここに点在する静かなフィールドに、プチグソの鈴の声が聞こえてくる 効果音 がらんがらぁ〜ん。がらんがらぁ〜ん。 ナレ  月明かりに照らされて、司を乗せたプチグソが駆けていく 司  「……」 ナレ  おもしろいんだかおもしろくないんだか、     無表情にプチグソを操作する司。     ふいにプチグソを止め、半ば雪に埋もれた構造物の方へ歩かせる。     上れそうで上れない構造物に突き当たるプチグソ。     プログラムのままに愚直に前進を続けようとする 司  「バカだ……」 ナレ  鈴の音たかく、プチグソ、再び走り出す。     所変わって、水上に光の粒子が舞う“幻の泉”。     その泉の仲に短剣を投げ入れる司。すると、     光の粒子が収束して、泉の妖精・ムッシュが現れた 泉の精「あなたが落としたのはぁ〜、この金の斧ですかぁ?それともこの銀の斧ですかぁ?」 ナレ 「語りかける泉の精に、司は杖を振り回し攻撃する。だが、妖精には当たりもしない。     すると、後ろの方で笑い声がし、ドキッと振り返る。 ベア 「(屈託なく)おもしろいか?」 司  「(露骨に警戒)……」 ベア 「ベアだ。ヨロシク。俺もくさくさしてるときはそんなことをする事がある。     煮詰まってるんなら手を貸すぜ。ちょうど初心者のサポートしてるとこだし」 ナレ  司は、そう言っているベアを差し置いて転送・消滅してしまった ベア 「まぁ、シャイなおかた……」 BT 「おぃ、剣士が戦闘放棄してどうする?」 ナレ  そこへ、女性呪紋使いのBTが駆けてきた ベア 「でも勝てただろ?」 BT 「ボロボロだけどな」 ベア 「回復してやろうか?」 BT 「自分でしたさ」 ベア 「じゃあ問題なしだ。ここじゃみんなそうやって強くなっていくんだ」 BT 「優しくないのな…」 ベア 「優しいよ。甘かぁないけど」 BT 「ベア、今笑ってるだろ…」 ベア 「微笑んでる、と言ってほしい」 BT 「こっち向いたら、殴る」 ベア 「なんで?」 ナレ  と、BTに顔を向けるベア。ニカッと歯をむき出して、     これ以上もないほどに目を細めたその顔…不気味である。 BT 「(無視して)そろそろダンジョン行くか……。顔、戻らなかったらどうるす?」 ベア 「(不気味なまま)うおおおおお!!!」 BT 「!?」 ベア 「う・そ」 ○水の都 昴  「こないだ、オルカさまと、お話をする機会がありました。     あのお方も“ザ・ワールド”の昨今に危惧を抱いておいでです」 剣士 「確かに、ユーザーの増加によるモラルの低下には、目を覆うばかりのものがある…」 昴  「そのことではありません。     詳しいことはまだ言えない。そうおっしゃってましたが……     バルムンク様ともっと調べた上で、また相談することもあるだろう、とも」 剣士 「蒼海のオルカと蒼天のバルムンク…その二人が動いているのなら、間違いはない。     心配することもないでしょう」 昴  「いいえ、あの二人が動くほどのこと…だからこそ、不安なのです。一体何が……」 昴  「……?」 ナレ  剣士が視線を刺している先を追うと、運河沿いの路に司が立っている。司も二人に気づいて、踵を返して走っていく 剣士 「(ぽつり)正義を行いのは難しい……」  1の2終了